ネットベンチャー経営者が見た2016年「CES」。その①
田中です。今年、私は初めてCES(コンシューマーエレクトロニクスショー)に行ってきました。こんな新製品があった、というレポートは色々なメディアで出ているので、私はネットベンチャー経営者としてどうCESをどう感じたのか、未来をどう思考したのか、生々しいレポートを書こうと思います。何回かに分けて書きますので、よろしくお付き合いください。
第1回目は観戦ガイドとウェアラブル/ヘルスケア/スマートホーム、第2回はベンチャーエコシステム/デジタルヘルスケアサミット/デジタルマネーサミット/ドローン/大企業ブースの感想、第3回はラスベガスという街について書こうと思います。
■ラスベガスへついた
ラスベガス。1人の気の狂った男が砂漠のど真ん中に創りあげた幻想の都。そんなイメージがある。1946年にマフィアであるベンジャミン・シーゲルがフラミンゴホテルをオープンさせてから70年。(このホテルは今でもある。全く新しい建物になっているけど。)マフィアという職業はいただけないが、何もない砂漠に一大産業を築き上げるエネルギーは、ベンチャー経営者として興味がわく。私は36年前、幼い頃米国に住んでいてラスベガスにも行ったことがあるらしいのですが、全く記憶にありません。さて今はどうなってるんだろう。
約12時間のフライトを経て、預けた荷物を取りにいった私の目の前には、いきなりルーレットマシンとシルク・ド・ソレイユやブリトニー・スピアーズのエンタメ看板が鎮座。ここでCESの参加バッジも同時に受け取ります。
いかにもラスベガスな預け荷物受け取りコーナー。
■CES会場へ、はじめての観戦ガイド
CESは会場が3つあります。広い広いとは聞いていたけど、広すぎる、、、TechWestがヘルスケア/ウェアラブル/3Dプリンタ、そしてベンチャー。TechEastが大企業/ドローン/VR/自動車/家電といったざっくりとした区分けです。まず一日目はざっくりWestとEastを散策して、二日目三日目で集中して見る計画。
だったのですが、、なんということでしょう。Westの1階から攻めて行ったのですがWestをざっくり上から下まで見るだけで既に4時間が経過。会場にはまずいメシに長蛇の列。アラフォーのおっさんにこれはつらい。何度かセレボさんのブースの前を通ってがんばってる姿を拝見するだけで癒され、さらに奮い立つ。俺もがんばらねば、と。
Westは大体何があるかわかったので、Eastへ。EastはWest以上に広いのです。こんなに歩くのがんばったの小学校の遠足以来ですよ。
さらに、CESでは展示会場だけでなく、カンファレンスも同時開催。私の行ったのは「Digital Healthcare Summit」と「Digital Money Summit」(これは第2回で書きますね)でしたがこれだけで朝から晩までずっとカンファレンスが開かれています。このようなカンファレンスも合わせると、とても4日間だけでは足りません。
■CESで未来を見て、何をネットベンチャー経営者として感じたか(ヘルスケア・スマートホームについて)
・CESはもはやハードだけではない。次はソフトウェア(およびそれに立脚するサービス)が鍵
先日IPOしたFitbit。バンド型のヘルスケアウェアラブルコンピュータの雄。さすがに大きいブースを出していました。FitbitはWest会場の1階にあるのですが、地下のベンチャーブースで、どう見てもFitbitに似たウェアラブル機器をアジアのベンチャーを発見。話しかけてみたところ、「Fitbitと同機能で半額以下でできるよ!」とのこと。いいんかいな、、、と思いつつ、これはもうハードウェアのみでの戦いはこうなっていくだろうなと。去年のCESではとにかくIOT!でインターネットに接続してればOK的なノリもあったようですが、今年のCESでは「ヘルスケア系ハードウェアはより高度かつ複雑化」もしくは「上に乗っかるサービスで勝負」という方向性がはっきり示されていたように思う。
・「ヘルスケア系ハードウェアはより高度かつ複雑化」
今回のCESでは、ヘルスケア分野においては、センサー付きのフィットネスマシンや、センサー付きの自転車ペダル、センサー付きのバスケットゴール(!)等、特定の産業に特化していたり、BtoCだけではなくBtoBを主眼に置いたものが目立った。特定産業や特定の業務にきっちり入って、参入障壁を築くようなパターン。下はフィットネスマシンをネット接続するもの。
・「上に乗っかるサービスが勝負。次はインターネット産業で起こったことが繰り返される」
FitbitのようなBtoCを中心としたウェアラブル・コンピュータはハードウェアだけの魅力ではコスト競争で勝てなくなるだろう。かつてインターネットがインフラとなってあらゆる企業が参入していったように、今度は「ネットビジネスの作法」を取り入れたキラーアプリケーションを創りあげるか、プラットフォーム化したところが勝つと思う。ネットワーク効果や収穫逓増、新しい情報取得手段を活かして今までにないデータベースを作り、検索性を上げ特定分野のキラーサービスになったなど、そういったこの20年のネットビジネスの数々のチャレンジを経て我々が創りあげていったノウハウや手法がきっとこの新しい分野でも活きてくるに違いない。センサーは、あくまで情報取得手段の新しい手法であり、そのセンサーのデータを活かしてネットビジネスの作法で勝負してくるベンチャーが必ずや現れる。これにすごくワクワク興奮した。これは我らも活躍できる時代が来るぞと。
・スマートホーム分野では無線技術のライバル争いと、それを尻目にNestがサービスレイヤーで斬りかかる
スマートホーム分野では、ZigBee、Z-waveなどの家電向け通信規格の覇権争いが見られました。これらのアライアンスが、自社のブース内に、様々なスマートホーム製品を展示。かつてのビデオ規格/DVD規格争いを思い出します。いかにもハードウェア的な戦い方。
これらのブースも気になったのではありますが、私が感じ入ったのはサーモスタット(家屋の温度調整機器)「Nest」がスマートホームの中心点になろうという動き。Nestは、2014年に開発者向けAPIを公開しており、今回も「Work with Nest」のロゴをあちこちのブースで見ました。ウェアラブルデバイスとの組み合わせで、起きる時間に最適な温度にする/照明器具の明るさを調整するなど、スマートホームのサービス同士でより強固なエコシステムを創り上げていこうよ、という気概を感じたわけです。ここにも、ある種インターネット的な攻め方を感じるのは私だけでしょうか。ネットワークに参加するものが増えれば増えるほどこのネットワークの価値は増していく。さらにそれが異なるサービス同士で起こっていく。これはとても面白いですよね。
下はスマートロックとセキュリティシステムとNestを組み合わせたもの。
Fringe81は、センサーを活用したウェブサービスを今計画しています。そのためにCESに行ったのです。ですが、我々はIOT、をやりたいわけではない。メーカーになりたいともあまり思っていない。こういったセンサーが新しい情報手段として現れたのであって、それを活用したウェブサービスを僕達はやりたいと思う。なぜならこの会社はインターネットが好きすぎて創られた会社なのだから。
我々広告産業のプレイヤーは、この5年で市場をリアルタイム化し、よりオープンなものとしてきました。これらのヘルスケア周りの機器の整備、Nestに代表されるようなスマートホームのエコシステムがつながってくる中、新しいシチュエーション、新しいユーザー体験が今始まっています。ここで再度、新しい情報提供の仕方(≒広告)を考えていく必要があるでしょう。どう我々が貢献できるのか、大いに考えていきたいと思いますし、議論すべきだと思います。
我々がこの数年で築きあげてきた、リアルタイムに情報を収集し、分析し、最適化していくアドテクノロジーの技術は、十分応用が効くなと確信した。CESで未来を見に行って、Fringe81が未来を創る自信ができました。
こういった事業開発されたい事業企画の方、エンジニアの方、まってます!
それでは、続きは次回をお待ちください!