「褒めるのはみんなの前で、しかるのは個別に」は正しいか
毎週のように人的資本に関する記事を書いてきたので、いったんお休みして、Uniposのサービス設計や思想についてもコラム的に書いて行きたいと思います。
さて、タイトルにもあります「褒めるのはみんなの前で、しかるのは個別にやるべし」という格言を聞いたことはありますでしょうか。マネジメントの基礎的な考え方として上司から聞いた方も多いのではないでしょうか。
この格言、調べていくと、どうもかの政治家、田中角栄氏が言ったとか。(角栄氏はみんなの前で叱っていなかったのだろうか・・)
この格言、うなずけるところありますよね。
■みんなの前で叱るのがダメなわけ
全員の前で吊し上げるわけで、いわば罰を与えているのです。恥ずかしさも当然加わります。穴があったら入りたい思いです。もしかすると、組織の規律を守る、ミスが減る、というメリット?を狙っているのでしょうか。ところがこういった行為は、心理的安全性を下げる要因となります。なぜなら、ミスやまずいことをしたときに、全員の前でさらされるよりは、「沈黙」を選んだ方が得となるからです。いわゆる隠蔽の温床になりやすいのです。
個別に叱るのも、やり方によっては沈黙を増加させてしまいますが、みんなの前で叱ると、多くの組織に属する人が「沈黙」を選んだ方が得だな、と判断しやすくなりますよね。
■みんなの前で褒めることは、良いか悪いか?
では、今度はその逆に、みんなの前で褒めることは、良いか悪いか?ということですが、アカデミックな研究があるわけではないので何が絶対的に正しいと言うのは難しいと思います。
実はUniposでは、「みんなの前で称賛する」事が良いのではないか、という設計をしています。
Unipos営業資料より。Uniposは、「心理的安全性を高め、挑戦できる風土をつくる」ウェブサービスです。上記のように、1対1であると、組織に良い行動が伝播しません。そこで、誰の投稿も同じフォーマットとしました。社長でも、一般社員でも全て同じです。
Uniposでは、組織内で「こういう行動をしても大丈夫なんだな」と伝播させることを狙っています。
ところが、、
■「先生、どうか皆の前で褒めないで下さい」という本を発見する
アマゾンのランキングでこの本を見つけました。「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」
はじめ見つけた時は、若干自分としては衝撃が走りました。この本は著者の金田さんの軽妙な語り口と、数々の現代の若者を象徴するデータを用いていてとても面白かったです。
金田さんの普段触れていらっしゃる大学生は、授業で当てられる、目をつけられる、目立つことが嫌である。なぜならヨコの繋がりを大切にするからである、という箇所からは、
「そういえば自分もそんな大学生だったな、、、」と思うことしきりでした。
ただ、「皆の前で褒める」事をやろうとしているUnipos社としては、この本からの学びから答えを出さなければいけません 笑
金田さんの本でも、大学生が社会に出る、ということはヨコ(同期)中心の社会からタテ(上司や組織)中心の社会へ強制転換させられるのが「就職」である、と論じておられます。
私の考えはこうです。つまり、大学時代は、ヨコ中心の社会であるので、「目立たないこと」が生存に繋がる。(あいつ和を乱すやつだなと思われないためにも。リクルートスーツは年々地味になっているそうです。)
ところが、社会に出たとたんに、同期などのヨコはいるものの、タテの関係が強くなる。タテの関係が強くなる組織では、心理的安全性が無いと発言もできなくなってしまう、ということでしょうか。
ヨコが強い社会では、みんなの前で褒められるのは、良くないのでしょう。ではタテの関係が強い会社では??と考える必要がありますね。
人材を活かし切るには、心理的安全性が必要なわけで、なんとか良い行動を増やしたい。これはなかなか難問です。
私の中で、これが良い、これはダメ、という結論はすいません出なかったのですが、UniposのUI設計や体験設計に工夫を重ねて、
- 使えば使うほど「目立つ」のではなく「安心」できるような体験にすること
- 今まで組織の壁があり、知ることができなかった良いニュースや行動を簡単にシェアできるようにすること
をサービスとして考えていく必要があるな、と強く思いました。
過去コンテンツへのリンクです。
人的資本を考えるシリーズその1:人的資本経営を多面的に考えてみる
人的資本を考えるシリーズその2:人的資本の開示は誰にとって重要か
人的資本を考えるシリーズその3:具体的な開示項目を先駆者に学ぶ。企業文化は開示項目となるか?
人的資本を考えるシリーズその4:心理的安全性と人的資本経営の関係について
「心理的安全性」は日本企業こそ必要?-若手は超マイノリティ-
金融庁の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案について人的資本の側面から見てみました
Unipos社では、「心理的安全性を高め、挑戦できる風土をつくる」サービス「Unipos」を提供しております。ぜひお問い合わせください。