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丸井グループさんに人的資本経営について教えてもらいました


先日、私は中野にある丸井グループ本社にお邪魔していました。目的は、人的資本経営で最も先進的な取り組みをされている丸井グループ様に、なぜ、ここまでの開示をされているのか、その背景や目的を教えてもらおう、と思ったからです。

 

最近になって、金融庁からも人的資本経営の開示につき、今までよりも大幅にその適応範囲を広げた案が出されました。(こちらについては詳細はこちらに書きました

 

人的資本開示には、他の企業と比較可能な「比較可能性」事項と、それぞれの企業の特色が出る「独自性」事項をバランスよく開示することが求められています。

 

私が見る限り、日本の中でもトップクラスに独自性事項において(比較可能性事項においても、たくさん開示もされているのですが)、特に企業カルチャーについて大きく開示をされているのが、丸井グループ様です。元から、こんな風土の会社だったのか、そうではないのか、疑問は尽きません。

この日、私の無理なお願いにご対応いただいたのは、丸井グループの執行役員で、tsumiki証券の社長でもある青木さん、そして取締役執行役員で産業医でもある小島さんです。ありがとうございます。

 

■丸井グループの変革はいつから本格的に始まったのか?

「2009年〜2011年が一番つらかった」—丸井グループは、2007年ころに貸金業法の改正等の影響で業績が悪化し、2009年と2011年には赤字となっています。組織風土改革、カルチャー改革に取り組み始めたのはこの頃、ということで「組織風土を抜本的に変えるには10年〜20年はかかった」とおっしゃっていたのが印象的でした。

その頃の丸井グループを象徴する写真が「丸井グループの人的資本経営」に登場する下の写真です。

全員黒っぽいスーツで、ほとんどが男性。わずかに女性が参加されています。こちらは丸井グループの自社ブランドのスーツを全員が着ていたことにも要因はあったようです。社長の青井さんの強い意向もあり、この頃から様々な風土改革の施策を投入されていったそうです。

どのような改革をされていったのか、の前に、↑の中期経営会議が現在どうなっているのか?丸井グループが取り組まれたこの10年の非常にわかりやすい成果が、以下の写真です。

みなさんの服装!そして女性の参加者の数!そして笑顔。全く異なりますね。多くの企業で、このような変化を起こしたい、どうやるんだろう、と思われるのではないでしょうか?この後、いくつか「どうやって変わったのか」の秘密を教えていただいたので共有しますね。

 

■丸井グループの人事制度で特に興味深かった「グループ間職種変更異動」

私がかなり、日本の一般的企業と丸井グループが異なるな、と感じたのは、「3年程度で全く異なる職種・異なる業種をグループ内で異動させる」という事が徹底されている点でした。

「新卒で入った社員は、3年程度小売の現場を経験した後、エポスカードに携わったり、ベンチャーと協業したり、証券会社に務めたり、と異なる職種だけではなく異なる業種も含めて異動させている」「年同じ現場にいると、そろそろ・・・」という異動のコンセンサスが社内に浸透しているのです。

当初、私は異動といっても、同一業種内で専門性を高めていくのかな、と思っていました。普通の企業だとそうですよね。ところが、丸井グループでは、ある時は小売り、ある時は財務、ある時はアニメ事業、などご本人の希望と、会社からの指示のもと、次々と変わっていくのだそうです。「丸井グループにいる人はほとんどの人がエポスカードのお勧めや発行ができるんですよ」とおっしゃっていました。すごい。そういえば青木さんも先日までCVCをされていると思っていたのに、今は証券会社の社長でした。

また、このミーティングの後、若手社員の方と青木さんと中野にゴハンにいったのですが、その若手社員の方は、「新卒で入って北千住店でバッグを販売した後、博多マルイでマネジメントを経験、その後アニメ事業部に入り、現在は丸井が出資されているベンチャーキャピタルでベンチャー支援をしている」というご経歴でした。「社内で転職しているようなものです」「会社には色々な経験をさせてもらってるのでいつか恩返ししなきゃ」とおっしゃっていました。そして、この若手社員の方と青木さんは北千住店で店長と1年目、という時からの繋がりで、「お客様にありがとうと言ってもらえた事にうれしさを感じる、『小売マインド』が共通しているのです」と教えてもらいました。

「小売マインド」のような共通化された価値観や下地があることでの連帯感、さらに異動させまくることでスキルの多様性が非常に高いのが丸井グループの強みなのですね。

 

■手挙げの文化を加速する評価制度

証券も、アニメも、小売も、様々な機会がグループ内にあるからこそ、積極的、主体的に社員が行動するのでしょうね。「手挙げの文化」が、何度も「丸井グループの人的資本経営」で登場します。

また、異動だけではなく、社内での論文による各種公募や、サステイナビリティ、Well-being、多様性など、各種のグループ横断プロジェクトが存在します。会社のあらゆる仕組みが、一つの事業や職種への固定化、サイロ化を防ぐために存在しているのだなと強く感じました。2017年には、新しい評価制度として、パフォーマンス評価に加えてバリュー評価(経営理念・バリューへの共感や主体的なリーダーシップを評価するもの)を投入された結果、こういった通常の企業では「業務外」となりがちで、現場が忙しくなると後回しにされがちなものへの参加がものすごいのです。

 

■社内プロジェクトは効果アリ

私が「社内プロジェクトに一生懸命になると、現場からクレームが来たりしないんですか?」と(すいません若干意地の悪い質問でした)聞いたところ、「社内プロジェクトで得た成果を必ず現場へ共有する会があるため、むしろ新しいテーマや考え方が現場に浸透するようになっている。手を挙げる事が会社として良いとされているし、現場もそれに興味を持っている」とのお答え。

さらに、こんなスライドを見せていただきました。

なんと、現場とは直接関係が無い、組織横断のプロジェクトに関わった方が、働きがいや職場の一体感が増す、という結果が出ているのです。これを前後でデータ取得しているのが最高ですね。

こちらを見た時に、あれ、どこかで見たようなグラフだなと思いました。下記は、Uniposを多く使っている部署と、あまり使っていない部署のデータを比較したものです。明確に組織内のコミュニケーションや、働きがいにつながっています。一見既存の業務に直接関係のないように見える、カルチャーをつくる活動や称賛はサイロ化を防ぎ、組織の一体感を増す施策になりうるのではないか、と思われます。

■企業文化や人への投資は「明確なストーリーがある」

こちらも小島さんに見せていただいたのですが、「Well-being経営の価値創造ストーリー」というスライドです。私はこのスライドのように目的、方法、アウトプット、アウトカム、このようなフレームワークで人的資本開示もされていく必要があるな、と強く思いました。このような骨太のストーリーがあり、投資リターンも明確に追いかける指標として掲げる。このようにしないと、人的資本の比較可能な数値を並べるだけでは、「あの時人的資本経営の開示って話題になったよね」的になることが怖いです。

せっかく、働く環境が変わろうとしている中で、このストーリーづくりが企業に求められるのではないでしょうか。

■人への投資は、「明確なリターンがある」

下記2つのスライドも、ここまで明確に出している先行事例はあまり無いのではないでしょうか。現時点ですでにコストを収入(限界利益)が上回っている、とのことでした。

丸井グループは、この他にも多数の人的資本やサステイナビリティに関する資料を発表されています。私がうまく魅力を伝えられたか、あまり自信が無いのですが、少しでも皆様のご参考になればうれしいです。ご対応くださった小島さん、青木さん改めてありがとうございました。


過去コンテンツへのリンクです。

人的資本を考えるシリーズその1:人的資本経営を多面的に考えてみる

人的資本を考えるシリーズその2:人的資本の開示は誰にとって重要か

人的資本を考えるシリーズその3:具体的な開示項目を先駆者に学ぶ。企業文化は開示項目となるか?

人的資本を考えるシリーズその4:心理的安全性と人的資本経営の関係について

「褒めるのはみんなの前で、しかるのは個別に」は正しいか

「心理的安全性」は日本企業こそ必要?-若手は超マイノリティ-

金融庁の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案について人的資本の側面から見てみました

丸井グループさんに人的資本経営について教えてもらいました


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