人的資本開示に関してこの半年で起こったことまとめ
8月〜12月にかけて、人的資本開示に関して大きな動きがありました。流れが速いので色々な方が混乱していたり、整理するのが大変になっているので、まとめてみようと思います。
ー前提ー
元々、人的資本開示にまつわる上場企業の開示については、コーポレート・ガバナンスコード(2021年6月改定)において、プライム市場またはスタンダード市場に上場している企業は開示すべき事項として記載がありました。全部で83原則あります。この中に人的資本に関する項目が入っています。
また、グロース市場においては基本5原則となっており、人的資本の開示についてはグロース市場は開示必須では無い、という理解でした。
一方、金融庁の下記ディスクロージャーワーキンググループの事務局資料においては、有価証券報告書において人的資本に関する開示は「全企業」となっていましたので、全企業対象となる可能性がありました。
ー前提終わりー
5月13日 経済産業省より、「人材版伊藤レポート2.0」が発表され、人的資本経営の具体的なアイデアや方法論が提示される
8月6日 内閣官房・非財務情報可視化研究会より、「人的資本可視化指針」が公開される
ここでは、下記のように投資家のニーズが高い「比較可能指標」と企業独自の戦略やビジネスモデルについては「独自指標」を推奨し、両指標のバランスが重要とされました。
11月7日 金融庁より、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について
が発表されました。この改正案により、今後は有価証券報告書内で、
「従業員の状況」において、男女差異等に関する項目が追加
「サステイナビリティへに関する考え方および取り組み」において、人材の育成方針と社内環境整備への戦略と指標の記載が追加
が求められることになりました。
11月28日 日経新聞報道 人的資本開示、23年3月期から 大手4000社対象
”人材を企業の資本とみなす「人的資本」の開示義務化に向けて、金融庁が検討してきた制度の詳細が固まった。有価証券報告書(有報)を発行する大手企業4000社を対象とし、2023年3月期決算以降の有報に人材投資額や社員満足度といった情報の記載を求める。上場企業の多くを占める3月期企業は早急な対応を迫られる。”
と記述があり、上場企業すべてに開示義務が発生すると読み取れます。特に3月末決算の会社の多くは来年6月に有価証券報告書を提出しますので、あと半年しか準備期間が無いという早急な対応が必要となります。
12月7日 上記改正案のパブリックコメントが締め切られました。
※今後の流れとしては、パブリックコメントで寄せられた意見の反映がありますのでこの改正案通りにはならないかもしれません。コーポレートガバナンスコードに従ってグロース市場は除くなどの措置がとられる可能性も、あるかもしれませんが、私としてはグロース市場に上場するような新興企業やベンチャー企業こそ人的資本が重要になってくるので、積極的に開示することが重要ではないかと思っています。